Le régiment H ─ル・レジマン・アッシュ─

台湾・高雄市から土方歳三と榎本武揚を想いつつ、幕末と江戸時代ににまつわる話題を書いています。

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真実のアラミス~『アラミスと呼ばれた女』への突っ込み

ちょっと気分が乗ってきたので、続いて更新です。

図書館から『アラミスと呼ばれた女』を借りて読んでいましたが、読了しました。
この小説は幕末ファンになった頃から気になっていたものの、その題名を目にするたびにモヤモヤした気分になりました。
そのわけは後ほど詳しく書きます。
先日、はな。さんのブログでの紹介記事を読んでから、にわかに読む気になった次第です。

この小説は一言で言えば、フランス語会話の得意なヒロイン、お柳が榎本釜さんを恋慕うあまり(!)に男装してまでフランス語通詞として、箱館までついて行く話です。

この先は『アラミスと呼ばれた女』の感想ではなく、「三銃士」関連の話題になる上、『アラミスと呼ばれた女』のネタバレなので、この先を読まれる方はその辺りをご了承ください。
それから…このブログの読者にいらっしゃるかどうかわかりませんが、『三銃士』の原作のアラミスのファンはこの先を読まない方がいいでしょう。

『アラミスと呼ばれた女』の「アラミス」とは即ちヒロインのお柳です。
ヒロインはジュール・ブリュネをはじめとする、フランス軍事顧問団のメンバーから「アラミス」と呼ばれていましたが、彼女はなぜ自分がその名で呼ばれていたかわかりませんでした。
しかし後に、お柳は「アラミス」は19世紀のフランスの文豪、アレクサンドル・デュマの小説「三銃士」の登場人物の一人で、アラミスは女性的な人物として描かれていることを知ります。
お柳は男装をして通詞の仕事をしていましたが、女性的な人物の名で呼ばれていたということは、フランス人たちはお柳が本当は女だったことを知っていた、と気づくのです。
でも、わたしが男装して「アラミス」を呼ばれた女と聞いて、まず思い出すのは「アニメ三銃士」のアラミスです。

何度もこのブログに書きましたが、わたしは長年の「三銃士」ファンです。
このブログにおけるわたしのキャッチフレーズ「骨の髄までフランス好き」は、「三銃士」と「ベルサイユのばら」によって形成されたといっても過言ではありません。
日本では20年以上前(!)にN☆Kで「アニメ三銃士」(以下「アニ三」)としてアニメ化されたのを契機に、ファン層が広がりました。
わたしも「アニ三」がきっかけで三銃士ファンになった一人です。
それから、原作の小説を読破し、大人になってからはフランスの三銃士ゆかりの地に足を運びました。

「アニ三」で好きなキャラは、アラミスでした。
原作では男性だったアラミスは、アニメでは男装した女性に設定が変更されました。
彼女の颯爽とした姿は、正に「男装の麗人」と呼ぶに相応しかったです。アニメ放映当時、アラミスが一番人気でした。
下の画像が「アニ三」のアラミスで、パリで購入したフランス語版のDVDです。(日本版より装丁が豪華!)
これが「アニメ三銃士」のアラミス!
「アニ三」がきっかけで「三銃士」の原作の小説を読んだ人は原作ではアラミスが男性なのに驚いたファンが多かったようです。わたしは当時読んでいたアニメ雑誌で知りました(笑)


確かに原作の「三銃士」においては、アラミスは女性的な人物として描かれています。

「なあ、アラミス」と声をかけられた男は、ポルトスとは似ても似つかぬ男だった。年のころは二十か、せいぜい二十三ぐらい、無邪気なあどけない顔つき、黒いやさしい目を持っており、バラ色の頬に秋の桃みたいに、かわいらしいうぶ毛が生えている。ほっそりした口ひげが、上唇の上できれいに刈り込んである。手を下げたままにしていると、今にも血管が膨れあがれそうな感じがする。ときどき耳たぶをつねる癖があるのは、その美しい透きとおった紅色をいつまでも失いたくないからだろうか。ふだんは口数もすくなく、ゆっくりしゃべるたちで、腰も低く、笑うときには美しい歯を見せて静かに笑う。手入れがいいのは歯ばかりではなく、身体全体にこまかい注意が行きとどいている。

『ダルタニャン物語1 友を選ばば三銃士』 鈴木力衛・訳より引用


上の文章を読む限りでは、原作のアラミスは物静かな美青年に思えますが、実際はそうではありません。
この頃から秘密主義で、美青年だったゆえ、ある貴婦人の愛人として、様々な陰謀に加担しています。
それは年を重ねるごとに顕著になり、ただの秘密主義ではなくなります。

余り知られていませんが、「三銃士」には続編があります。
その名の通り、「三銃士」より20年後が舞台の「二十年後」、それより更に10年後が舞台の「ブラジュロンヌ子爵」という長編小説です。
日本では「三銃士」、「二十年後」、「ブラジュロンヌ子爵」をまとめて、「ダルタニャン物語」と称しています。

「ブラジュロンヌ子爵」の中に、映画化もされた、かの有名な「鉄仮面」のエピソードが含まれています。
「鉄仮面」で、フランス国王ルイ14世と、バスティーユ(牢獄)に幽閉されていた国王の双生児をすり替えるという陰謀を企てたのは、この頃、イエズス会で高い地位の聖職者になっていた、アラミスです。
フランス王家を揺るがそうとしたアラミスの陰謀は失敗に終わりますが、それでも生き延び、三銃士とダルタニャンの中で一番長生きします。
わたしにとって、原作のアラミスは単なる女性的な人物ではなく、常に陰謀を企てている人物なのです。
ここまで書けばお分かりでしょうが、わたしはアニメのアラミスのファンですが、原作のアラミスのファンではありません。(ちなみに原作では三銃士の一人、アトスのファンです)

先程も書きましたが、『アラミスと呼ばれた女』で、フランス軍事顧問団のメンバーがお柳を「アラミス」と呼んだのは、男装のお柳を「三銃士」に登場する女性的な人物「アラミス」になぞらえたからですが、彼らが「三銃士」以降の物語を読んでいたら、決してお柳を「アラミス」とは呼ばなかったでしょう。
ということは、『アラミスと呼ばれた女』の作者が、「三銃士」以降の物語に登場するアラミスを知らなかったんでしょうね…

「男装の女性」というと、凛々しい女性が頭に浮かびますが、お柳は全然凛々しくなく、なよなよし過ぎていると思います。
わたしが男装して「アラミス」を呼ばれた女と聞いて、まず思い出すのは「アニメ三銃士」の凛々しいアラミスなので、あのなよなよしたお柳が「アラミス」と呼ばれるのに非常に違和感を覚えます。
第一、お柳自身も「アラミス」と呼ばれるのに違和感があって、釜さんには昔からの愛称「ミミー」で呼ばれたがっています。
また、男装していなくても、お柳は釜さんが生涯、思いをかける女性にしては、物足りない印象を受けました。
(奥様の多津さんは別にして)、小説に登場する釜さんのお相手はもっと粋で、釜さんと対等に接することができる女性がいいなと個人的には思っています。
その点では『武揚伝』に登場した「おたえ」はかなりいい感じです。(釜さんがバターヴィアやパリで彼女の姿を探すほど、翻弄されてましたし☆)

まとめると、わたしが『アラミスと呼ばれた女』という題名にモヤモヤした理由は、以下の通りです。

◇「アラミス」を呼ばれた女と聞いて、まず思い出すのは「アニメ三銃士」のアラミスだから。

◇原作小説のアラミスは単なる女顔の美青年ではなく、陰謀家なのを知っているから。

これらのことを説明するのに、長々と書いてしまいました(苦笑)

それから、『アラミスと呼ばれた女』には様々なフランス語の文章や言い回しが登場しますが、カタカナで書かれている文章を仏語のスペルにする能力は、大学の仏文科を卒業して10数年たってもまだ残っていました。
仏文科卒として気になったのは…最後の方で、お柳が余生を少女時代を過ごした長崎で暮らそうとして、向島で釜さんに今生の別れを告げた後で、心の中で「すべてオ・ルヴォワール(さよなら)」と言う場面があります。
でも、釜さんに今生の別れを告げた女が、「オ・ルヴォワール」と言うのは実はおかしいです。

フランス語では「さようなら」の表現が二通りあります。
一つは「オ・ルヴォワール(Au revoir)」、もう一つは「アデュー(Adieu)」です。
'revoir'は「再び会う」という意味の動詞で、'Au revoir'はまた会う相手に対する「一時の別れ」の挨拶です。
一方、'Adieu'は長期間あるいは二度と会わない相手に対する「永遠の別れ」の挨拶です。
そんなわけで、お柳の別れの言葉は「アデュー」の方が相応しいのです。

この小説は釜さんや長崎海軍伝習所、箱館戦争についてあまり知らない頃に読んでいたら、ヒストリカルロマンスとして楽しめたでしょうが、今となっては本当のところはどうだったんだろう?と気になってしまい、純粋に楽しめなかったのがちょっと残念です。
でも、釜さんとお柳の美味しい場面がいくつか登場したので、(年甲斐もなく)そんな場面に萌えてしまいました(笑)

その中に、箱館奉行所の釜さんの部屋で、釜さんがお柳をひざだっこ(!)する場面があります。
いやぁ…こんな場面、幕末小説で見たことありません。
そして、わたしの愛読マンガ『エマ』にひざだっこの絵が描いてあるのを思い出して、早速見てみました。
(『エマ』はヴィクトリア朝末期のイギリスが舞台のメイドと上流階級の男性とのロマンスです)
コミックス7巻(本編最終巻)のあとがきマンガに、ひざだっこの絵が載っていて、キャプションに「ヴィクトリア朝のデフォルト恋人ポーズ」とありました!
さすが釜さん…ひざだっこはオランダ留学時代に知ったんでしょうね(爆)

最初にも書いた通り、『アラミスと呼ばれた女』の感想ではなく、すっかり三銃士話になってしまいました。
でも、このタイトルを初めて書店で見た時からモヤモヤと思っていたことが書けて、すっきりしました(笑)
この本のまともな感想ははな。さんの他に、香音里さんも書かれています。
お二人に比べて、いかにわたしの視点が変か読み比べてみるとわかるでしょう。
そもそも、フランスかぶれで、ヒストリカルロマンス好きだったわたしが幕末の世界にハマったこと自体が驚きなんですが…

前日に引き続き、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
  • [No Tag]

*Comment

 

ご紹介いただき、ありがとうございました(笑)
感想なんて、人それぞれですもんね。いろいろあった方が面白いです。
私なんか「武揚伝」で釜さんをすっかり理想の人物化してしまった頭でこの作品を読んだので、かなり偏っていると思います(^^;

それにしても、まやこさんの「三銃士」に対する熱い思いはすごいですね。
私は昔「モンテ・クリスト伯」を読んであまりにも面白かったので、「三銃士」も確か上巻だけ買ったのですが、さて、どこへ行ったのか・・・?(読んでないことだけは確かです・汗)
  • 香音里 
  • URL 
  • 2009年03月16日 02時04分 
  • [編集]

 

>香音里さん

勝手に香音里さんの『アラミスと呼ばれた女』の感想を紹介して失礼しました。
『武揚伝』に比べると、『アラミス~』の釜さんは何だかなぁと思うところもありますが、フィクションの世界ならああいう釜さんもありだと思います。
元々ロマンス小説が好きなので、ロマンス要素が入っている小説には点が甘くなります(苦笑)

「三銃士」は本文にも書いた通り、フランス好きのわたしを形作った下地となった作品なので、思い入れはとても深いです。
何度か渡仏した折に、原作者のアレクサンドル・デュマの邸宅やお墓、「三銃士」の作中で三銃士やダルタニャンが下宿していたとされる通り、などゆかりの地巡りをしました。
でも、幕末ファンになっても、やっていることはほとんど変わりないです(笑)

「三銃士」は「モンテ・クリスト伯」に負けず劣らず面白いので、機会があったらぜひ読んでみてくださいね!
  • まやこ 
  • URL 
  • 2009年03月16日 22時48分 
  • [編集]

 

まやこさん、こんにちは。
ご無沙汰しております。
超亀コメントでスミマセン。
(この本を読んだのが最近なもので・・・。)

>お柳の別れの言葉は「アデュー」の方が相応しいのです。
私も同じことを思いました。
フランス語を話せない私でも、「オ・ルヴォワール」と「アデュー」の違いは知っているので、
作家さんならば尚更知っておいて欲しいな~と、僭越ながら感じた次第です(^^;
  • まきこ 
  • URL 
  • 2010年03月15日 21時04分 
  • [編集]

お久しぶりです 

>まきこさん

こちらこそ、大変ご無沙汰しております。
コメントの返信が遅れてしまい、大変申し訳ありません。

「アラミスと呼ばれた女」をお読みになられたのですね。
フランスネタを物語に取り込むのなら、しっかり調べてから書いてほしかったです。
「三銃士」のアラミスの真の人物像はともかく、仏語の2種類の別れの挨拶のニュアンスの違いは調べればすぐにわかりそうなことなのに…
作者は時代小説には割と定評のある人のようですが、「アラミス~」を読んで以来、他の作品を読む気が失せました。

それから、別便もありがとうございました。
追って、返信いたします。
  • まやこ 
  • URL 
  • 2010年03月18日 23時01分 
  • [編集]

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Author:まやこ
2月27日生まれのうお座・AB型

舞台や展覧会を観るのが好きで、仏蘭西と西洋史をこよなく愛する歴女です。(や○い・BLは好きではないので、腐女子ではないようです(笑)

2006年の元旦に「新選組!!土方歳三最期の一日」を見たのがきっかけで新選組副長、土方歳三のファンになり、幕末の世界に足を踏み入れ、全身どっぷり漬かっています。
土方歳三だけでなく、榎本釜次郎武揚、小栗上野介忠順、中島三郎助も贔屓にしています。
彼らの足跡を追って、山の奥や海の彼方にも行きました。

ブログのタイトルは仏蘭西語です。意味と由来はこちらをご覧ください。

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結婚に伴い、長年住んでいた武州多摩郡某村(甲州道中沿い)から武州久良岐郡(横浜市南部)に引っ越したが、2014年6月に夫の仕事の都合で台湾南部の高雄市に住むことになりました。

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