Le régiment H ─ル・レジマン・アッシュ─

台湾・高雄市から土方歳三と榎本武揚を想いつつ、幕末と江戸時代ににまつわる話題を書いています。

Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  • [No Tag]

『覚悟の人』

久しぶりに読んだ幕末本の話です。

ここ1ケ月、勤務先の近くの図書館で借りた『覚悟の人 小栗上野介忠順伝』(佐藤雅美・著)を読んでいました。
やっと読み終わったので、感想というより思うところをつれづれに書いてみます。

小栗さんが主人公の小説はこれまで『小説小栗上野介 日本の近代化を仕掛けた男』(童門冬二・著)と『罪なくして斬らる』(大島昌宏・著)を読みましたが、今回読んだ『覚悟の人』は先に挙げた二作品よりフィクションな逸話が少なく、小栗さん自らがつけていた家計簿や日記からの引用が多く、小説というより評伝に近かったです。
わたしがこの本を読む気になったのは、ある方のブログに「小栗さんの史伝が読みたい」とコメントしたら、この本を勧められたからです。

正直言って、かなりシビアな内容です。
ずっと苦い薬を口に含んでいるような感じで読んでいました(苦笑)

『覚悟の人』は開国当時の通貨の交換問題から話が始まっています。
アメリカにとって都合のいい通貨の交換比率を何とか正してくるようにと、小栗さんはポーハタン号で渡米する前に水野忠徳(日仏修好通商条約を締結)から密命を受け、アメリカで交渉を重ねますが、失敗に終わります。
わたしは金勘定が苦手なので、通貨の交換比率に関する件を読んでいるだけで頭が痛くなりそうでした。
上記の「アメリカにとって都合のいい通貨の交換比率(為替レート)」を悪用して、駐日公使のハリスや、小栗さんたち遣米使節団を乗せる前にポーハタン号の乗組員はさんざん私腹を肥やしたそうです(ーー;)
さすがにこの件はアメリカ本国で問題になり、ハリスは帰国後冷遇されたそうです。
日本の通貨の実情を知ろうとせず、また日本側の主張に全く耳を貸さず、自国と自分に都合のいい為替レートをごり押しして、私腹を肥やしたハリスの実態を知って、わたしはある人の言葉を思い出さずにはいられませんでした。
『人間ならば誰にでも、すべてが見えるわけではない。多くの人は、自分が見たいと欲することしか見ていない。』(ユリウス・カエサル)

また、小栗さんや、水野忠徳は好意的に書かれていますが、世間一般では割と評判が良くても、この小説では批判的に書かれている人物が何人もいます。

その最たる人物が、徳川慶喜です。
作者は心底からアンチ慶喜で、文中で何度となく慶喜を「腰抜けの卑怯者」と評しています。
わたしは幕末についてほとんど知らなかった頃は、慶喜を割と好意的に見ていましたが、幕末に興味を持って色々と本を読むようになってから、慶喜の行動を知るにつれて、佐幕派になったにもかかわらず(佐幕派だから尚更?)何だかなぁ…(ーー;)と思うようになりました。
そして『覚悟の人』を読んで、ますますその思いに拍車がかかりました(苦笑)

あくまで私見ですが、慶喜がこれほどまで腰抜けで卑怯者でなかったら、あと数年は徳川幕府は生き長らえたと思います。
小栗さんが慶喜に対して思うところはあっても、譜代の幕臣として幕府を立て直そうと奮闘したにもかかわらず、慶喜は大政奉還によって小栗さんの努力をほとんど水の泡にしてしまったのですから…
慶喜の出番が増える後半になると、行間の随所で作者の慶喜への憎悪が露わになっていて、読んでいて主人公である小栗さんより、慶喜の印象の方が強く感じられてしまいました(爆)
小栗さんと何かと比較される、勝(海舟)さんはこの小説ではそれほど登場しませんでした。

「良薬口に苦し」と言いますが、この本はいささかわたしには苦すぎたようです。
本当はもっと実のある突っ込んだ感想を書きたいのですが、明日(というより今日)図書館に返却しなくてはいけないので、感想を書くのはタイムアップです(汗)

最後に…慶喜及びハリスファンの方、厳しいことを書いてしまい申し訳ありません。
でも、この本を読むと、この二人の行動をフォローできなくなります^^;
  • [No Tag]

*Comment

お久しぶりです 

私は慶喜公好きですので、コメントを見て「覚悟の人」にどのように書かれているのか気になりまして、さっそく本を注文しました。

新選組から幕末に入った私は当初、徳川慶喜や勝海舟に納得出来ない面をもってましたが、旧幕臣達を調べるにつれ、一口に幕臣と言ってもピンからキリまであり、慶喜公、勝海舟路線に協調した幕臣もいれば小栗、榎本路線に協調した幕臣もいてどちらが良い悪いと言えないと思うようになりました。


それは例えると幕府と言う名の旅客機が故障し多くの客を抱えている状態で空を飛んでいるとすると、

「故障を修理し再び空を飛ぶことを目指す」=主戦論

「そんな危険なことは無理、不時着させる」=恭順論 

といった所でしょうか、

とまあ、これが適切な例えかどうか別にして、鳥羽伏見の戦い後の江戸の徳川家の様子、江戸開城前後の政治的背景の研究に関しては
原口清著「明治前期地方政治史研究」上 (塙書房)がお薦めです。
  • 毅 
  • URL 
  • 2007年11月16日 06時02分 
  • [編集]

 

>毅さん
お久しぶりです。
『覚悟の人』はアンチ慶喜を極めた内容なので、読むにあたって相当覚悟された方がよろしいかと思います。
幕末史の研究書を多く読まれている毅さんなら『覚悟の人』で書かれた「腰抜けの卑怯者」な慶喜像を崩せる(というよりフォローできる)かもしれません。
読まれた暁にはぜひ感想をお聞かせください。
  • まやこ 
  • URL 
  • 2007年11月16日 23時36分 
  • [編集]

 

『覚悟の人』、お読みになられたのですね!
小栗さんの立場をきっちり書いている本で、好感の持てる一冊ですが、小栗以外にやや厳しすぎる点はちょっと痛い本です。
小栗さんを描く上で、あそこまで慶喜を追い詰めなくても(爆)、と思いましたが、きっと著者の佐藤さんが慶喜のことが嫌いなのでしょう(ハリスもか)。
歴史を書く上で、小説ではなく評伝の場合には、ホントは個人的な感情を持ち込まない姿勢で書くべきなのですが。そこだけがちょっともったいない本です。
どの時代の歴史でも、嫌いな人を作ったら視野が狭くなるのでもったいないですから☆

慶喜さんは本当に興味のつきない、調べ甲斐のある幕末最重要人物です。
ぜひ、ほかの本や史料などに触れて、まやこさんご自身の慶喜さんイメージをお持ちになることを、おすすめしちゃいますっっ。

  • はな。 
  • URL 
  • 2007年11月17日 13時52分 
  • [編集]

 

はな。さん、こんばんは。

『覚悟の人』の著者が小栗さん以外の人に対して厳しいのは、小栗さんを持ち上げたいがために、貶めたような感じさえ受けます。
もし、小栗さん以外の人物も客観的かつ冷静に書いていたら、第一級の小栗さんの評伝になっていたと思います。
本文に「小説というより評伝に近い」とは書きましたが、あまりにも著者の主観が入りすぎたために、評伝でなく小説になってしまったのが残念です。

>ぜひ、ほかの本や史料などに触れて、まやこさんご自身の慶喜さんイメージをお持ちになることを、おすすめしちゃいますっっ。

その言葉、心に留めておきます。
これからも幕末本を読むことになりそうなので、『覚悟の人』の慶喜像はあくまで一例としてとらえ、わたしなりの慶喜像を模索していこうと思います。

ところで松戸の戸定邸は慶喜ファンは必見の場所だと思いますが、はな。さんは行かれたことがありますか?
  • まやこ 
  • URL 
  • 2007年11月17日 18時25分 
  • [編集]

 

>評伝でなく小説になってしまったのが残念です 
小説家の方が書くと、どうしてもそうなってしまいますね。
これまた残念なことです。
とはいえ、なかなか研究者の方が手を出してくださらない現状をみると、こういう評伝であっても(笑)、貴重といわざるおえません。
本当なら史家の方の評伝を拝見したいところなのですがっっ。
幕臣関係はなかなか・・・(涙)。

>松戸の戸定邸
まだこれほど幕末を調べる前に、行ったことがあります。静かなよいところでした。
  • はな。 
  • URL 
  • 2007年11月20日 09時02分 
  • [編集]

 

はな。さん、こんばんは。

わたしが長い間興味を持っていた西洋史の世界では、小栗さんのような立場の人の小説や評伝が邦訳されることはほとんどないので、小説のような評伝でも日本語で読めるだけ日本史はいいかも…と思ってしまいます(苦笑)
でも、本当のところは小栗さんの正統派評伝よりも『小栗日記』の翻刻を全部読みたい(というより見たい)です。

幕末史に深くのめりこむ前に、松戸の戸定邸に行ったことがあるとはさすがです~
ここもぜひ行ってみたい場所の一つです。
  • まやこ 
  • URL 
  • 2007年11月20日 23時08分 
  • [編集]

 

「覚悟の人」、まだ全部読んだ訳ではないですが、
確かに慶喜公ボロカス書かれてますね。

特に、大政奉還の記述、慶喜は何ら周りの動きを知らないで「ただぼやーと大政を奉還した」とありましたが、「ぼやーと」って・・・。これには呆れてしまい笑ってしまいました。 

大政奉還も説の古い「大政再委任論」で書かれてますし、岩倉具視を単に討幕派と見るのも問題ですし、

経済的な内容は評価しますが幕末政治的記述は雑ですね。

そりゃそうでしょうね、幕末の重要な政治家の一人である慶喜を「こいつはダメ」という目線でしか見てないですもの。

自分の好きな人物は高く評価し敵対してたり立場上考えの違う相手を罵倒するだけの姿勢は逆に自らの醜態を曝け出すようなもの

私も一応は歴史を取り扱うサイトの管理人ですが、表現は特に気を使います。
  • 毅 
  • URL 
  • 2007年11月25日 21時59分 
  • [編集]

 

毅さん、こんばんは。

『覚悟の人』を読まれているのですね。
作者は幕末の政治に関しては最新の研究に基づいて書いていない、ということでしょうか。

>自分の好きな人物は高く評価し敵対してたり立場上考えの違う相手を罵倒するだけの姿勢は逆に自らの醜態を曝け出すようなもの

はな。さんへのコメントでも似たことを書きましたが、この小説は小栗さんを持ち上げようとするあまりに、小栗さんに敵対したり、考えの異なる人物に対して批判的すぎますよね。
作者の感情を持ち込まずに、もう少し客観的な視点で書いていたら、もっと気持ちよく読めたのにと思わずにはいられません。
  • まやこ 
  • URL 
  • 2007年11月26日 21時24分 
  • [編集]

コメントの投稿

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

*Trackback

トラックバックURL
http://regimenth.blog55.fc2.com/tb.php/168-f381ccb5

ご案内

プロフィール

まやこ

Author:まやこ
2月27日生まれのうお座・AB型

舞台や展覧会を観るのが好きで、仏蘭西と西洋史をこよなく愛する歴女です。(や○い・BLは好きではないので、腐女子ではないようです(笑)

2006年の元旦に「新選組!!土方歳三最期の一日」を見たのがきっかけで新選組副長、土方歳三のファンになり、幕末の世界に足を踏み入れ、全身どっぷり漬かっています。
土方歳三だけでなく、榎本釜次郎武揚、小栗上野介忠順、中島三郎助も贔屓にしています。
彼らの足跡を追って、山の奥や海の彼方にも行きました。

ブログのタイトルは仏蘭西語です。意味と由来はこちらをご覧ください。

もし記事の内容に間違いを見つけましたら、鍵付コメントか下のメールフォームにてご指摘ください。
本文に全く関係のないコメント・トラバは見つけ次第即削除します。
WEB拍手のコメント返しは、拍手をいただいた記事につけます。

結婚に伴い、長年住んでいた武州多摩郡某村(甲州道中沿い)から武州久良岐郡(横浜市南部)に引っ越したが、2014年6月に夫の仕事の都合で台湾南部の高雄市に住むことになりました。

ブログランキングに参加中!

↓一日一押しお願いします♪

にほんブログ村 歴史ブログ 幕末・明治維新へ

日々のつぶやき

最近の記事

月別アーカイブ

西暦をクリックすると、その年の月別リストが表示されます。

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

ブログ内検索

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。